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本を読む日々の身辺雑記


by aokimugi

現実と虚構

最近、やっと映画、『イノセンス』を観た。
映像の美しさは言うまでもないが、その世界設定のあまりの面白さに勢いでDVDをレンタルして、『攻殻機動隊』26話×2シリーズを見てしまった。
もちろんずいぶん前から評判は聞いたことがあったがシリーズものでしかも長いので手を出していなかったのである。
結果、見事にはまりました。う~む、もう少し早く見とけばよかったかも。

アニメ作品にこんなにはまったのは本当に久々のことである。
意識と個性を獲得したAIと「人間」の差はどこにあるのか・・・。
わずかな脳以外全身偽体という機械でできている人間も珍しくなく、機械に接続された脳に干渉することで視界や記憶の書き換えすら行われてしまう世の中で行われる犯罪とはどういったものか・・。
とことん考え抜かれたその世界設定だけでもわくわくするのに、主人公達公安9課が追う「巨悪」の描き方のリアルさには脱帽しました。
欲と面子、政治的思惑でがんじがらめになった権力の中枢にはびこる組織的犯罪の、たちの悪さ・・・それは正に現実の政治の舞台裏を見ているようだった。
というか、SFアニメを見てて「この世界の新聞を読みたい・・・。」とか思ったのは初めてでした。(笑)
あまりに事件の描き方がリアルすぎて、ついつい、もう少し事件の概要をきちんと把握したいから新聞かなんかおまけで付けてくれ~!!と思ってしまうのである。(私だけ?)

これを見ていてほんとにいろいろ考えさせられた。
たとえば手足や顔、記憶すらも書き換えが可能な世界において自分を「自分」と規定するものは果たして何なのか。
素子を見ているとやっぱり【意思】なんだろうな、と思うのだが。
どうなのだろう。(隣にいた弟2号に、なんか違うだろ、と突っ込みを受けてしまいましたが・・・。笑)
あと、タチコマの台詞には時々のけぞってしまった。
あの思考パターンと台詞考えた人を尊敬します。凄すぎる・・・。
タチコマたちが自己分析してる会話は最高でした。脳と直接繋がったネットを介して無意識下で意識の共有現象が起こり始めている人間と、最初は記憶と意識が並列化していたのにだんだん個性を獲得していくタチコマたちの思考。
タチコマたちの会話によって両方の現象の姿が明確化されていくのが分かり、聞いていてどきどきした。
「バトーさん、バトーさん、○の概念が分かったよ~、アナログでの0(ゼロ)のことなんだと思うんだ。」
とか、「座禅してる人とアクセスしたら、○○がダウンロード出来ちゃうかも~!」とか・・・。他にもタチコマの名台詞はいっぱいです。
・・・大好きよ!!タチコマ!!(笑)

最近は帰省するたびに弟と攻殻の話で盛り上がります。家族でこういうネタ話せるのっていいですよね。弟がオタクであることに感謝する瞬間です。(わっはっは・・・・・・・・って私もか!?)
時には母も加わって現実の政治ネタに飛び火して白熱した会話になってたりもしますが・・・。
そんな母との話の中で出てきたひと言が印象的でした。

「やっぱりなんといっても一番面白いのは、現実の問題の中から出てきたフィクションでしょ?」

これは結構核心を突いた見解なんじゃないかと思います。
どんな分野でも良質の虚構作品(フィクション)の底に共通しているのは現実をとことん見つめる視線の存在であるはずです。それが徹底し、細部まで細かく設定されている作品ほど面白いと私は思います。小説でも、アニメでも、映画でも。
上のような意見を持った私の好みからすると攻殻機動隊シリーズはまさに傑作でした。
・・・原作も読みたいなあ・・・。
by aokimugi | 2005-07-01 01:23 | 映画・アニメ