本を読む日々の身辺雑記


by aokimugi

カテゴリ:漫画( 4 )

パーム

10月24日にパームシリーズの最新刊、「午後の光Ⅲ」が発売します。
パームシリーズは私にとって大好きすぎて思いを語るのも難しい作品です。
いうなればずっと昔からの古い友人のような存在かもしれません。

つい先ほどその作者の執筆最終段階に入るにあたっての「お別れの言葉」を読みました。
http://www.magiccity.ne.jp/~bigcat/TIME.html

パームを読んだことのある方もない方も、是非一度読んでみてください。

どんなことでも。人でも。必ず別れの瞬間はやってきます。
でも一緒にいた時間は消えないし、もらった言葉とか、楽しかった瞬間とかは消えない。
・・・最近別れを意識することが多いので、ちょっとこんなことをぐるぐる考えてしまいました。

よ~し私も「幸せ」にならなきゃな~。(この感想もちょっと違うかもしれません・・・)
[PR]
by aokimugi | 2006-10-23 00:35 | 漫画

百物語

寝苦しい夏の夜にうってつけの本を一冊ご紹介しましょう。

百物語』(杉浦日向子/新潮文庫)

古より百物語と言うことの侍る
不思議なる物語の百話集う処
必ずばけもの現われ出ずると


                (本文より)

明治時代の新聞を読んだことはありますか?
今度図書館に行って見てみてください。特に三面記事の隅っこの方に注目して。
誰それが狐に化かされたらしい、なんて記事が割りと普通に大真面目に書いてあります。
これは、そんな明治時代よりもちょいと昔の江戸の時代を舞台にした怪談・奇談集の漫画です。

のんびりとした昼下がり、ある暇なご隠居が、もらい物の線香百本の粋な使い方を思いつきます。
訪れる客に不思議な話を語ってもらい、一つの話につき一本線香を点していくのです。
  ひ、ひゃ、百物語!?  と冷や汗たらりのお客にご隠居はのんびりと答えます。
  なぁに、九十九話まで聞いて残りの一本は無事を祈って立てるとしよう。

かくして百物語は始まります。
と言っても御察しの通りこの本には九十九話までしか載っていませんので、ご安心ください。(笑)

さてさて、肝心の中身の話に参りましょう。
人から聞いた話には、大概の場合、落ちがありません。
ただ、これこれこんな不思議なことがあったそうな、と話すだけでそれからどうなったか、なんでそうなったか、はあんまりよく分からないもんなんじゃないでしょうか。
この百物語もそんな風に落ちのあるような、ないような、奇妙な話がいくつもいくつも淡々と語られています。
昔話とも、噂話、ともちょっと違うこの感じ、あらすじでは説明しにくいので、私が九十九話の話を読んだときになんとなく思い出した感覚を怪談風に語ってみることにします。(笑)

実家に暮らしていた受験生の頃、自分の部屋にいると周りが本だらけで集中できないので、夜中、家族みんなが寝静まる夜更けまで一階の居間で勉強をしていることがありました。
そろそろ寝ようか、と思って二階に行くのですが、ときどきわざと電気を点けないで階段を上りました。
ちょっとした受験の息抜きです。勝手知ったる我が家の階段なのですが、電気を点けないと本当に真っ暗でちょっとしたスリルを味わえました。そうして、とんとんとん、と軽く上っていくと、大体なぜか最後の段だけ空振りしてしまうのです。階段が終わり二階の床に着いただけで大したことはないのですがその一瞬だけは本気でちょっと冷や汗が出ます。
あると思っていたものがない・・・。その一瞬だけ、自分の知らない変な空間に間違って足を踏み入れてしまったかのような、奇妙な違和感がありました。

こんな感じでいかがでしょう?分かっていただけるかは謎ですが自分では割と上手く書けたんじゃないかと・・・。(←おい)

上の話は置いておいて、本編の中で私が好きな話をちょっとだけ紹介して終わりたいと思います。(なお、下の紹介は、漫画を文章にしたため、読みやすいようちょっと文をいじってあります。)

信州の話。
古着を商う広造という男が届けものを済ませ、家に帰ると女房が二人になっていた。
広造には見分けがつかなかった。女房の親、兄弟をみせ、僧や八卦に見てもらっても一向にらちが明かない。先祖の戒名も、商いの挨拶も、小皿の場所も、親戚の好物までどちらに問うても二人とも万事心得ていた。結局、広造夫婦は三人で睦まじく暮らし、やがて女房はそれぞれ三人ずつ女児を生んだ。
広造の六人の娘は皆同じ顔をしているという。


知人の話である。
彼の妻がその白い手のひらに真っ赤な柘榴を置いて、あなた、ほら。と何気なく差し出してきた。彼は柘榴を見て或ることを思い出した。
商用で松江に逗留した折。目覚めると仄明るく、朝かと思い障子を開けると、向かいの蔵の白壁に月明かりの照り映える夜半だった。その壁から手が生えていた。手は、月の光を掬い取る形で掌を天へ向け、確かに造り物と見え、美しく、固く動かなかった。
仏像の手をいたずらしたものだろうか。 
と考えたが、翌朝見ると跡形もない。その夜は別の所から生えていた。
名工の作か、眺めていると時を忘れるようだった。ふと、近くの柘榴をもいで載せた。
その翌朝、出立前に見れば、手も柘榴もなかった。

狢が化かす話。
夜、山の一本道を歩いていると突然何にもない夜空から、長あい帯が垂れ下がっているのにでくわす。
ただ、下がっているだけで別にどうということはありませんがね。そんなものに出くわした日には気味の悪いものですよ。


他にもいろいろ・・・読んだちょっと後に冷や汗が流れたような話もありましたが書きません。
もちろん、怖いので。
[PR]
by aokimugi | 2005-07-09 04:15 | 漫画

移動する風景

ここ半年あまり鈍行列車に乗って長距離移動する機会が多い。
長い時は5~6時間あまりも乗っている。
新幹線と違い、鈍行列車は民家の軒先を通ったり、フェンスの向こうが海だったり田んぼだったりするような小さな田舎の駅にも止まる。
家の軒先につながれている犬の顔が見えたり、川で魚を釣ってる人を見つけたり、雲の動きや風にそよぐ緑の稲のうねりを見つめるのは楽しい。
がたごと体を揺すられながらぼんやり外を眺め、本を読みながら時々うたたねをし、
はっと気づくとその瞬間には前とは全然別の景色が目の前に広がっている、そんなのんびりとしたリズムが案外気に入っていたりする。
そしてついつい想像してしまうのだ。列車にたまたま乗り合わせた人たちの人生とか、電車の外で川原を自転車で疾走してる男の子の日々とかたくさんのたくさんのひとのことをぼんやりと。

今日もそんな鈍行列車の小さな旅をしてきた。
揺れる電車の窓の外では日が沈み始め、街頭やビルの明かりが光の帯を目の裏に残して消えていく。
明るく照らされた車内に次々と降りては乗り込んでくる疲れた顔をした見知らぬ人たちと肩を並べながら
生と死を凝って結晶化させたような漫画の短編集を読んだ。

『12色物語』 (坂口尚・講談社漫画文庫)
絵と文が美しい。
透明な水のように胸の内側にすらりと切り込んでくる。

12色の色をテーマに描かれた短編集である。
ヨーロッパの町角、ひまわり畑の広がるスペイン
冬のロシア、戦争の砂漠、アメリカの町工場、日本の南アルプス・・・様々な土地を舞台に淡々と描かれる話の中で、人の生がそして死が透徹とした視線で静かに見つめられ、深く脈打っているようであった。

中でも強く印象に残っているのは、「朝凪」という話だ。
町の厄介者の浮浪者のような老人が冬のクマーリの森の中で少年に語りかける場面が好きだ。人の孤独について、冬の木々を見つめて話すその老人の視線はどこか暖かい気がする。
凄く好きな台詞なのでちょっと長いけれど引用しておきます。
【必死になれないのは、寂しさを知らない人間なんだ
 ほんとうの孤独を知らない、孤独を見据えられないんだと思うよ・・・・・・
 わしは・・・・
 みんなが小さな暗がりを抱えて死に向かって歩んでいくのを想うと
 空恐ろしさやむなしさより なんだか知れない巨きな力を感じる・・・・・不思議な・・・・・
 そう・・・その不思議な力はどこかずっと遠いところから発していて
 その人の中に入るとその人自身の力をゆするように
 そして今度は自分の中で からだのすみずみの力を出し切って何かを全力でやろうという力
 にふくらんでいく  一生に時間になにができるか
 ・・・・・・いや、どれだけできるか考えるんだ】

他にも好きな場面はいっぱいあります。
「万年筆」では、少年が見つめる大河が・・・自分と母を捨てた父親のくれた万年筆のインクの色と似た、寒さに凍るロシアの大河の色が・・・白黒で描かれているのに息を呑むほど鮮やかに見えた気がした。
「マーロのオレンジ」でやんちゃなオレンジ売りの少年に見送られて出航する船や、地中海の真っ白な風車の絵・・・。
「蜃気楼」砂漠の中で腕を失い戦い続けなければならない一人の兵士の話。不毛な大地を見つめ、死を見つめ、愛した女性の記憶を見つめる彼の視線が私の目に焼きついている。
「夜の結晶」南アルプスの話である。そして、鉱石と星の・・・。
これ以上は言いません。
というか、語る言葉が見つからない。どう表現しても嘘になってしまうような気がするので。


この作品が普通に店頭に並んでいる世の中は捨てたもんじゃないな、と思いました。
作者は漫画を描く傍ら、手塚治の虫プロで、「ジャングル大帝」、「リボンの騎士」などの原画、動画、演出を担当していた人だそうです。・・・つまりかなり昔のしかもあまり知られていない(私が不勉強なだけかもしれませんがw)作品だと思うのでそういう作品が普通に文庫になってるとは、まさに復刊ブーム万歳!!といった感じです。文庫化してる作品結構あるみたいだし、この作者の他の本も読みたいなあ。
というか・・・あああまた揃えたい本が増えてしまった・・・。(笑)
いや、全然全くかけらも悔いはありませんがね。うん。
[PR]
by aokimugi | 2005-06-16 00:57 | 漫画

蒼のマハラジャ

今、一番続きを楽しみにしている漫画かもしれない。
なにしろ待っているだけでは読めないのである。

1990年代前半にあすかコミックスから出ていたが現在絶版中・・・。
全10巻であるらしいのだが、私は1~7巻までしか持っていないのだ。
続きがとっても気になって気になって仕方ないのだが、なかなかみつからない。
うう・・・。(泣)

で、どんな話なのかというと

舞台は第二次世界大戦が勃発しつつある時代のインドのラジャスタン地方。
主人公はイギリス人の少女、モイラ・バーンズ。
イギリスのラジャスタン大使である父と一緒に住むために母と共にインドにやってくる。

夢のように豪華な王宮での暮らしに大はしゃぎのモイラだったが、
同じ年頃の王子シルバと仲良くなり、様々なことが見えてくると周囲で不穏な事態が進行していることに否応なく気づいていく。

シルバは王位継承者のため常に命を狙われている上、父はイギリス軍を引き入れるための内部工作に暗躍しているようなのだ・・・。

イギリスの分割統治に対するインドの独立闘争が激しさを増し、世界中が戦争の渦に巻き込まれていったそんな時代にインドのラジャスタン藩王国のマハラーニ(王妃)となったイギリス人女性の話です。

わたしは主人公のモイラの性格が大好きなのである。
肝が据わっていて知恵があり、とにかく行動力がある!
暖かい性格なのに情に流されず状況を冷静に見極める目を持っている人なのだ。

決して単純なシンデレラストーリーではない。
・・・というか、結婚する前からものすごい苦労していてやっと結婚式を挙げたところまでしか読んでいないからこれからいきなり幸せなばら色生活が始まる可能性もなくは無い・・・のかもしれないが、恐らくそんなことはないはずだ。

作中何度もインド独立に向けての発言が繰り返されているからである。
恐らくこれからインド独立後の政府へ藩王国の政権移譲をするという政治問題へと
進展していくのではないのかな~、と予想している。
が、真相は知りません・・・。

うううう。続き読みたい・・・。

深刻なテーマを扱っているけれど、決して暗い雰囲気の漫画ではありません。
独特なテンポと明るさのある、とにかく物語としてめちゃくちゃ面白い話なのである。

最後に私の大好きなマハラジャ(=王様・シルバ)の台詞を引用しておきます。

     「宗教も政治も
             ・・・みんな同じさ
                      人間の幸福のためにあるんだよ。」


『蒼のマハラジャ』 神坂智子(角川書店・あすかコミックス)

   
[PR]
by aokimugi | 2005-05-24 01:09 | 漫画